・清末オーバーラップ
今多くの中国人達はアメリカを見てお笑いネタにしている。それは今のアメリカがかつての清王朝末期にそっくりだからという。「三世の春」と呼ばれる最盛期にはそれまでの旧王朝のどれよりもはるかに強大な政治力・経済力・軍事力・文化力を築きながらも、19世紀に入って政治が腐敗・堕落し、そこへ追い打ちかけるように欧米日帝国主義国家達の侵略まで受け、ついには辛亥革命で崩壊した大清帝国。その清末と今のアメリカがあまりにそっくり過ぎて、多くの中国人が笑っているのだ。
まずは麻薬の蔓延と財政赤字。清朝末期にイギリスは中国にアヘンを持ち込み、これが大流行して大変な事になった。誰もが知るアヘン戦争の時代である。今のアメリカでは? 大麻の規制緩和が行われる方針な上に、フェンタニルという鎮痛剤が麻薬代わりに大流行して、全土にヤク中があふれかえっているという。清末にはこのアヘン貿易のせいで大量の銀が海外へ流出して経済がボロボロになったが、今のアメリカでは? アメリカでは麻薬以上に民生が完全に無視され、世界中のあらゆる地域で紛争を起こして、財政赤字が天文学的なレベルに達している。違いがあるとしたら、清では銀という現物資産が流出したが、アメリカではドルという紙切れが大量に刷られて赤字を膨らませているという点であろう。そのドル崩壊も今やカウントダウンの段階に入った…。
お次は軍需関係の腐敗。清の最末期は西太后の独裁体制で、この女が国家財産を個人的な贅沢に放蕩し、特に割を食ったのが軍事関係であった。欧米日帝国主義の侵略にさらされて大変な国難だというのに、西太后のゼータクのせいで軍事予算がなくなり、まともな兵器をそろえられなかった。日清戦争の時、清軍の砲弾の中には火薬ではなく砂や油かすが入っていたという。アメリカは? いわゆる軍産複合体の腐敗は広く天下に知られている所であろう。アメリカの軍需産業のボッタクリは普通じゃないよ。そこらのホームセンターで1本数円か数十円で売られているようなネジが、アメリカの軍需企業から国防総省には数千円で納品されるのだという。知らない人は驚くかもしれないが、これはアメリカの軍産複合体では日常茶飯事である。しかもあれだけ天文学的な軍事予算を使いながら肝心の兵器の性能は大した事がなく、アメリカ製兵器で武装したウクライナ軍がロシア軍にボコボコにされているのは周知の通り。朝鮮共和国・中国・ロシア・イランがとっくの昔に開発に成功した極超音速ミサイルを、アメリカはいつまで経っても作れず失敗ばかり。アメリカが誇る空母船団なんて時代遅れの遺物になって久しく、イエメンの政府軍アンサール・アラー(いわゆるフーシ派)のドローンやミサイル攻撃に手も足も出ない。軍産複合体の腐敗が頂点に達し、あらゆる面でボロボロになっているのが米軍の現住所である。
垂簾聴政というのも不思議に共通している。かつて清末には穆宗・同治帝という5歳で即位した幼帝がおり、当然このような子供に政治は出来ない。そこで東太后・西太后という二人の太后が玉座の後ろに簾を垂らして座し、政治を見た。すなわち「垂簾聴政」である。今のアメリカは? 今の米大統領であるジョー・バイデンは81歳というアメリカ史上最高齢の大統領であり、それもかなりの恍惚状態である。自分の政権の閣僚の名前を忘れたり演説の途中で自分が何しゃべってたか急に忘れるなんてしょっちゅうで、誰もいない空間に急に手を伸ばして握手しようとしたり(空気と握手する男バイデン)、
ロシアのプーチンとは40年前から知り合いだとか意味不明な事をマスコミで公言していた。
それでいて女の体だけはとにかく大好きで、女と見れば公衆の面前であろうと幼女から熟女まで年齢問わずセクハラする。当然このような(色)ボケ老人に政治は出来ない。そこで副大統領カマラ・ハリスに下院議長ナンシー・ペロシという二人の女性が大統領の席の後ろに陣取って政治を見た。この認知症ジジイがうまく演説出来たらよくやったと拍手してやり、そうでない時はフォローを入れる。すなわち事実上の「垂簾聴政」だ。違いがあるとしたら、清末の時は二人の女性に補佐されるのが幼い皇帝だったのに対し、今のアメリカでは認知症の老人だという点であろう。
↑ 清末の垂簾聴政(某ドラマ番組より)と今のアメリカの垂簾聴政。そっくりじゃねェか(笑)!
こうした事から、当然老人政治(Gerontocracy)という問題点が浮かび上がってくる。清末はよく知られているように西太后が72歳で死ぬまで独裁政治が続き、その失政によって清はボロボロになった。今のアメリカは? 次の大統領選挙はまたしてもバイデン(81)とトランプ(77)の争いになる公算が高いものの、この両人いずれもかなりの高齢である。若い代案というのがないのだ。西太后時代の清は皇帝がみな幼いか、成人して開明な皇帝であっても飼い殺しにされて権限を振るえない状態にされていた。今のアメリカの場合はそもそも若い指導者候補が世に出ない。どこの国でもそうだが、こういうのは末期症状と言って良いであろう。
次のアメリカ大統領選挙でバイデンとトランプのどちらが勝つか? はっきり言って、どっちに転んでもおんなじよ、というのが筆者の感想である。ウクライナ戦争から始まったアメリカ世界覇権の崩壊はもはや誰にも止められない。誰の政権であろうとも挽回は不可能だ。バイデンもトランプも大のイスラエルびいきであったし、イランとの敵対政策も同じ。トランプが再選したら朝鮮共和国との関係がまた改善するのではないかという話もあるが、それもあり得まい。あの時(平昌デタント)とは情勢がまるで違うし、朝鮮はアメリカと関係改善しようとして何度も裏切られてきた。「アメリカは千載一遇のチャンスを逃した」(ハノイ決裂後の崔善姫談話)訳であり、もうそんなアメリカと関係を持つよりBRICS陣営との交流の方がはるかに実益が大きいよ。
先日の朝露条約締結を見ても分かるように、朝鮮共和国はもう完全にアメリカとの関係改善を放棄してしまったのだから。「南との統一の放棄」「アメリカとの関係改善の放棄」の二つが金正恩時代における最大の外交路線転換であろう。「平昌デタント」の失敗が大きな教訓となったのではないか。
ただしシカゴ大学のミアシャイマーが最近またしても気がかりな予測をしている。もしトランプが再選したらアメリカはNATOを脱退するだろう、というものだ。ウクライナ事態やイランの核武装を的中させてきたミアシャイマーの「予言」だけに、非常に興味深い。アメリカがいなければNATOなんて何の存在意義もなく、存続も出来ない集団だ。「NATOを終わらせる米大統領になるかもしれない」という一点に限って言えばトランプに軍配が上がるか。もっともプーチンが言ったようにロシア(及びアメリカと対立している国々の立場)からすれば、次期米大統領はバイデンの方がどちらかと言えば望ましいと言える。バイデンの方がトランプより無能で、敵としてはやり易い相手だからだ。一長一短、プラマイ収支を考えると、やはりどっちでもいいやという結論になってしまうか。