今日明日(2024年6月18・19日)にかけてロシアのプーチン大統領が朝鮮民主主義人民共和国を訪問中だ。当然金正恩国務委員長との首脳会談もある。
今現在日本のマスコミでは取り上げられていないようだが、今回のプーチン訪朝における大きなテーマの一つが「西側による対朝制裁の無力化」にあるのは間違いない。いや、実際にはそれ以外にも重要な案件が山ほどあるのだが、ここではそれにしぼって解説したい。労働新聞6月18日付記事「로씨야와 조선민주주의인민공화국:년대를 이어가는 친선과 협조의 전통 ロシアと朝鮮民主主義人民共和国:年代を受け継いでいく親善と協調の伝統」というプーチン自身による寄稿文が発表された。以下リンク先参照。
http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?MTVAMjAyNC0wNi0xOC1OMDAyQA==
로씨야와 조선민주주의인민공화국:년대를 이어가는 친선과 협조의 전통
로씨야련방 대통령 웨.뿌찐
2024.6.18. 《로동신문》 1면
一応日本語訳文も朝鮮中央通信のサイトで公表されている(以下リンク先参照)が、こちらはかなりの抄訳となっていていくつかの肝心な内容が入ってなかったりする。
http://www.kcna.kp/jp/article/q/904d568863da758180e721aee779e890.kcmsf
ロシアと朝鮮民主主義人民共和国:年代をつないでいく友好と協力の伝統
なぜこんな半端な訳文を掲載したのか分からないが、編集側の手抜かりというより意図的な抄訳の可能性もあるのではないか。日本側を馬鹿にして、なるべく知らせないようにという。なので、朝鮮語の出来る方で今回のプーチン寄稿文の内容を正確に把握したい場合は、労働新聞の朝鮮語原文記事を御覧いただきたい。今は機械翻訳の性能も大分良くなったので、朝鮮語の心得のない方でも重要な部分の内容をある程度読み取る事は可能であろう。
ここで注目したいのは、原文記事終わりの方にある以下の記述である
【原文】
로씨야는 어제도 래일도 교활하고 위험하며 침략적인 원쑤와의 대결에서, 자주와 독창성, 발전의 길을 자체로 선택하려는 권리를 지키는 투쟁에서 조선민주주의인민공화국과 영웅적인 조선인민을 지지하였으며 앞으로도 변함없이 지지할것입니다.
또한 우리는 국제관계를 더욱 민주주의적이고 안정적인 관계로 만들기 위하여 밀접하게 협조할 용의가 있습니다.
이를 위하여 우리는 서방의 통제를 받지 않는 무역 및 호상결제체계를 발전시키고 일방적인 비합법적제한조치들을 공동으로 반대해나갈것입니다.
또한 이와 함께 유라시아에서 평등하고 불가분리적인 안전구조를 건설해나갈것입니다.
【訳】
ロシアは、昨日も明日も狡猾で危険で侵略的な敵との対決において、自主と独創性・発展の道を自前で選択しようという権利を守る闘争において、朝鮮民主主義人民共和国と英雄的な朝鮮人民を支持してきたし、これからも変わりなく支持する事でしょう。
また我々は国際関係をより民主主義的で安定的な関係としていく為に、密接に協調する用意があります。
この為に我々は西側の統制を受けない貿易及び相互決済体系を発展させて、一方的な非合法的制限措置達を共同で反対していく事でしょう。
またこれと共にユーラシアにおいて平等で不可分的な安全構造を建設していく事でしょう。
日本や韓国といった西側のマスコミでは今回の訪朝について「朝露、外交的孤立を打開しようと接近。相互依存関係深化」「朝露間の武器移転憂慮」といった論調しか出て来ないのだが、こいつらどんだけ馬鹿で朝鮮半島の事を分かってないんだと言いたくなる。ウクライナ特別軍事作戦でネオナチ西側帝国主義をコテンパンにやっつけて、今やグローバルサウス諸国から最大の英雄みたいに崇められてるプーチンが「外交的孤立」とか物知らずにも程がある。朝鮮共和国の核にしても同様で、アメリカの脅威に晒されてきたアフリカや南米や西アジア(いわゆる中東)の国々からしたら、朝鮮の核はどのように見えるか? 「あっぱれ朝鮮。ザマーミロアメリカ」の一言につきよう。先日アフリカのニジェールでフランス軍が追い出されたが、その時地元民達の反仏デモでは朝鮮やロシアや中国の国旗を掲げていた人がかなりの数であったという。ヨルダン川西岸地域で行われたパレスチナ人のデモでは多くの人達が金正恩とプーチンの肖像画を掲げていた。日本や韓国のマスコミが必死になって情報統制してるこうした事実こそ見なければならない。そして「親パレスチナ」みたいなツラをしながら同時に「反北朝鮮・反ロシア」を主張する日本人や韓国人が山ほどいる(特に左派・進歩派・リベラルに)が、そういう奴らほど矛盾という概念を理解しないノータリンであると思う。
流されやすいんだろうなと思っています。欧米日韓といった「アメリカ村」のみなさんは、今や自分らが地球上の片田舎の存在だという現実から目を逸らすのに必死だ。西側は精神的勝利に凄まじいエネルギーと費用を費やしている。
それはともかく、上記プーチン寄稿文において目を引くのが「
我々は西側の統制を受けない貿易及び相互決済体系を発展させて、一方的な非合法的制限措置達を共同で反対していく事でしょう」という所だ。ロシアに対しても朝鮮に対してもそうだが、西側による金融制裁の根幹がSWIFTなど決済手段からの排除であった。そうした統制を受けない決済体系手段を築くというのだ。お分かりであろう。これから朝鮮共和国は食糧・資源・エネルギーその他ほとんどの領域で完全かつ自由に外国と取引出来るようになっていくという事だ。すなわち西側による対朝鮮制裁というのはおしまいであると、今回のプーチン訪朝はそれを世界に知らしめるセレモニーだったのである。
それだけではない。今回の訪朝団に随行したロシア側閣僚の豪華さも目を引く。外相・第一副首相・国防相・保健相・交通相・宇宙航空公社社長・鉄道庁長などなど。これだけの広い案件がこの機会に論議されるというのだ。特に経済開発に関して言えば朝鮮のBRICS(今はロシアが議長国である!)加盟問題や、中国も交えた三国協力がポイントであろう。おそらく日韓のマスコミではほぼ報じられないであろうが、今後の朝中露経済協力で目玉となるのが前に
李海栄教授の記事で言及されていた「シベリア」に加え、新たに「豆満江」も加わるのは間違いない。それも今回の首脳会談で詰められるはずだ。この「豆満江開発」の件について日本では気付いてる者がほぼ誰もいないようで、日本の奴らにいらん知恵を与えるのも癪なので筆者からも細かい言及は手控えたい。重要なヒントとして言うならば、今回のプーチン訪朝は5月16-19日にあったプーチン訪中の件と連続した行動として見なければならないという事だ。これらの多岐にわたる包括的な戦略的協力協定が締結されてもおかしくなかろう(もちろんそうした協定が結ばれたとして、その内容を非公開にする可能性も高い)。たぶん岸田政権や日本外務省はこうした動きに何も気付いてないのではないか。でもそれで良いと思う。かつての小泉純一郎や田中均のような下手に狡賢い一部の日本人(がいたとして)に、いらん知恵を付けさせるのも厄介だ。何も知らないままに翻弄されて大やけどするのが日本帝国主義には相応しい。「豆満江」の件にしても、先日の中露首脳会談で両国の「領土問題」がどのようにウィンウィンな合意を見たかについても、日本の奴らは何も知らないままで、後でほえ面かくのが望ましいと思う。
対朝制裁はもう終わった。これもまた世界秩序がひっくり返った証拠である。でもほとんどの日本人・韓国人はそれに気付かないか、気付くのを拒否し続けるであろう。かつて南米日系人にいた「
勝ち組」みたいに。