先日発表された
広島市長松井一實の演説、凄絶の一言に尽きると思った。あまりに突っ込み所が多すぎるので、一部の
激烈バカな個所を限定して取り上げてみたい。
「戦後、我が国が平和憲法をないがしろにし、軍備の増強に注力していたとしたら、現在の平和都市広島は実現していなかったのです。この地に立てば、平和を愛する世界中の人々の公正と信義を信頼し、再び戦争の惨禍が起こることのないようにするという先人の決意を感じることができるはずです。」
凄ェよな。なんて…気味の悪ィ。この市長、戦後の日本が「平和憲法をないがしろにし」なかったと思ってやがる。今の広島が「平和都市」だなんて思い込んでやがる。こんな気持ち悪ィ市長見た事ねェ! 広島市が敗戦前に軍港・軍需工場の町だったのは有名な話だが、
それは戦後にも廃絶されておらず、今でも広島市は「軍需産業城下町」だ(ただしこのリンク先記事は日本の再軍備や広島市や呉市の軍需産業を割と肯定的に書いているので、読む時は注意が必要である)。反戦平和運動を多少なりともやった経験のある者なら常識であろう。そんな軍需産業城下町が「平和都市」だって? この市長は一体どこの異世界転生ラノベの話をしているのか。
異世界転生したら、そこのパラレルワールド日本では平和憲法が大事にされてて、平和都市になった広島で無双する人類最強市長の俺…。
「1989年、民主化に向けた市民運動の高まりによって、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊しました。かつてゴルバチョフ元大統領は、「われわれには平和が必要であり、軍備競争を停止し、核の恐怖を止め、核兵器を根絶し、地域紛争の政治的解決を執拗に追求する」という決意を表明し、レーガン元大統領との対話を行うことで共に冷戦を終結に導き、米ソ間の戦略兵器削減条約の締結を実現しました。このことは、為政者が断固とした決意で対話をするならば、危機的な状況を打破できることを示しています。」
あのいわゆる「冷戦崩壊・ベルリンの壁崩壊・東欧民主化」があたかも素晴らしいものであったかのように述べる松井市長。それで東欧やソ連がどうなったよ。みんな新自由主義化されて貧困のどん底に叩き落された。旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国はほとんどNATOに吸収されて、世界はますます危険になった。とりわけドイツ統一なんて旧西ドイツの極右・ネオナチどもにとっては祝福そのもので、あの時奴らはお祭騒ぎだったではないか。
浮かれ騒いでベルリンの壁をハンマーで叩いて喜んでた西ドイツの奴ら、あれは多くがネオナチであり、そいつらはその後旧東ドイツ地域へ押しかけて外国人労働者を殺害するなどのテロ活動を行った。ナチスが清算されてきれいになっていた東ドイツが、再びナチスに蹂躙されたのが「ベルリンの壁崩壊」と「ドイツ統一」だったのである。平和とは真逆の地獄絵図を現出させたのがゴルバチョフというソ連最後にして最悪のクソ指導者であった。ドイツ統一とはまさにヒットラーの亡霊が復活した瞬間であり、その後のユーゴスラビア空爆やウクライナへの軍事支援などがそれを証明してくれている。ゴルバチョフが核兵器を根絶しようとしただって? それで「冷戦を終結に導」いた結果がソ連邦崩壊であり、新自由主義とオリガークの泥棒経済による貧困化であり、NATOの東進であった。ゴルバチョフやレーガンのおかげでロシアはますます戦争の危機に晒されたのである。今のロシアはそうしたゴルバチョフの過ちの尻拭いをさせられているのだから。ウクライナ事態の前にプーチンが平和解決の為に対話をしようとして、どれだけミンスク合意はじめとする詐欺に騙された事か! こうした史実は「為政者が断固とした決意で対話をするならば、危機的な状況を打破できる」とは全く限らない事を示している。
「皆さん、混迷を極めている世界情勢をただ悲観するのではなく、こうした先人たちと同様に決意し、希望を胸に心を一つにして行動を起こしましょう。そうすれば、核抑止力に依存する為政者に政策転換を促すことができるはずです。必ずできます。」
もう何度も言い古されてきた話だが、そうして「核抑止力に依存する」ことを放棄した「為政者」すなわちイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィがどのように殺され、同国の人民達がどれだけ大量に殺されたか、世界中の人間が目撃している。それとは違い、原爆・水爆・大陸間弾道弾という「両弾一星」を完成させた朝鮮民主主義人民共和国はそれでアメリカの侵略を抑止させて、自国民を戦火から守った。朝鮮半島で戦争が起こっていない最大の理由は「日本の平和憲法」のおかげでも「平和を求める市民社会」のおかげでも「平和都市ヒロシマ」のおかげでも何でもない。「
朝鮮共和国が核を持っているから」だ。イランも先日核保有宣言をしたばかりで、これでアメリカとイスラエルは軽挙妄動出来なくなったではないか。それを全部やめろとでも? 広島の松井はアメリカやイスラエルの手先と言われても文句は言えまい。ちなみに朝鮮共和国が核開発へと大きく舵を切る事になったのは、先に松井が絶賛したゴルバチョフに大きな原因がある。ソ連崩壊間近の頃、ソ連は朝ソ条約を破棄して朝鮮への安保提供を打ち捨てた。それで朝鮮は独自に核を作って自国と人民を守らねばならなくなったのである。「核抑止力に依存する為政者」と朝鮮の金正恩を暗に批難しながら、その最大の原因を作ったゴルバチョフを大絶賛するとか、松井は自分が言ってる事の矛盾に気付いていないのか。それとも現アメリカ大統領並みの認知症なのか。
もうね、「平和都市広島」みたいな戯言を言うのはやめろという事だ。8月6日に「聖地巡礼」のごとく広島へ言って「平和教育」したり、原爆の落ちた時間に地面に寝そべったりといったパフォーマンスも一切やめろ。そんなのはもう帝国主義日本を被害者のように偽装する歴史修正作業にしかなっていないし、欧米日帝国主義の被害に遭ってきた第三世界人民達を愚弄するものである。今の「ヒロシマ」が象徴しているのは日本帝国主義の加害を消去してあたかも被害者のように偽装する歴史修正作業であり、日本含む西側帝国主義の軍拡や侵略戦争は知らん振りしてそれに敵対する国々や被侵略国の核や軍備だけ批難する為の道具でしかない。こんな「ヒロシマ」ならこの世にない方がマシだ。
「ヒロシマ」は日本敗戦の前も後も一貫して「日本帝国主義のヒロシマ」であり続けた。これはやはり、
今も多くの軍需工場を抱える「ナガサキ」も同様である。「平和都市」など元より存在しない。